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神経治療最前線 海外学会参加報告
The 40th Congress of the European Committee for Treatment and Research in Multiple Sclerosis
The 40th Congress of the European Committee for Treatment and Research in Multiple Sclerosis
Copenhagen, Denmark
2024年9月18日〜20日
藤盛 寿一
東北医科薬科大学医学部 脳神経内科学
2024年9月18日〜20日にデンマーク・コペンハーゲンで開催された、The European Committee for Treatment and Research in Multiple Sclerosis (ECTRIMS)の年次学術大会に参加してきました。
ECTRIMSは、多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)の病態理解と治療に関する世界最大規模の専門組織ですが、毎年9月にヨーロッパの各都市で、MSに特化した学会を開催しています。今年は第40回大会と記念すべき大会でした。私は2019年にスウェーデン・ストックホルムで開催された第35回大会に続いて、2度目の参加でした。
コペンハーゲンへは、スカンジナビア航空の直行便があるようですが、私は全日空を利用したかったこともあり、ロンドンのヒースロー空港経由でコペンハーゲン入りしました。ロシア上空を避けての北極海経由だったこともあり、かなりの長旅でした。コペンハーゲン空港に着いたのは夜9時頃で、ホテルまではタクシーを利用しました。運転手さんは、だいぶ飛ばし気味に走ってくれましたが、日本から来たと伝えると日産のGT-Rが好きだと言っていました。
宿泊は、学会会場のBella Centerまで徒歩15分程度のCabinn Metroホテルを予約していました。簡素な宿でしたが、とにかくシャワースペースが狭く、到着当日は失敗したかなと思ってしまいました。翌朝、ホテル内の朝食会場で席につこうとしたところ、聞きなれた声を聞き、見ると東北大学の三須建郎先生でした。ちょっとほっとするね、という話に互いなりました。それから4日間、同じ朝食メニューでしたが、このホテルのパンやチーズ、ヨーグルトは毎日食べても飽きない美味しさでした。
さて今年から、学会前日にPre-Dayイベントが開催されまして、私も参加しました。小児MS、視神経脊髄炎スペクトラム障害と抗myelin oligodendrocyte glycoprotein抗体関連疾患、自己免疫性脳炎と免疫関連副作用の3つがトピックでした。終了後は、国内からいらした他大学の先生方と、ニューハウン近くのレストランのテラス席で、夕食を御一緒しました。
翌日からは、ECTRIM meetingに3日間参加しました。参加人数は8500人だったそうです。Opening Plenary Sessionには、マルガレーテ女王陛下が参加されていました。教育セッションは有料ですが、画像、体液バイオマーカー、慢性進行に関わる病態、Glymphatic systemなどに関する5つのセミナーを事前に申し込んでいましたので、これらを中心に聴講しました。その他、hot topic、scientific sessionなど面白い内容が目白押しでしたが、会場9か所で同時進行でしたので、取捨選択して、聞けないものは後日on demandでということにしました。個人的には画像研究に関心がありますが、conventional MRI、advanced MRI、PET画像について、十分な話を聞くことができました。また、MSの新しい診断基準では、paramagnetic rim lesion、central vein signといった画像所見が盛り込まれることになりそうですが、ポスター会場では、これらの画像所見に関する発表が多かったように思いました。一方で、欧米ではMRI画像を頻回には撮像しにくいといった事情もあるようで、体液バイオマーカーの実用化に向けた動きが進んでいますが、neurofilament light chain、glial fibrillary acidic proteinに関する話や、オリゴクローナルバンドの代用としてのkappa free light chain indexの話もありました。治療に関しては、Bruton's tyrosine kinase阻害薬の1つであるtolebrutinibがトピックになっていました。
学会会場では、仙台カンファレンスでお世話になった、海外の先生方と再会することができましたし、国内の優秀な若手研究者の先生方にもお会いすることができました。やはり、こういった交流はなにものにも代えがたいものがあります。ちなみに、あまり遠出はできませんでしたが、コペンハーゲン市内をぶらぶらと散策できました。ヨーロッパの街並みは美しく、これでまた1年間は頑張って仕事ができるねと、最終日にお土産を物色しつつ東北大学の高井良樹先生と話していました。
帰国は、ドイツ・フランクフルト空港経由だったのですが、このあたりから風邪を引き始めていたようで、残念ながらフランクフルト空港からの帰路は全く楽しめませんでした。しかしこれも良い思い出です。来年はスペイン・バルセロナで開催されるとのことで、Xavier Montalban先生が閉会式でご挨拶されていました。ぜひ行ってみたいと思っています。