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神経治療最前線 海外学会参加報告

International Congress of Parkinson’s Disease and Movement Disorders

International Congress of Parkinson’s Disease and Movement Disorders

Philadelphia, PA
2024年9月27日〜10月1日

長尾龍之介
藤田医科大学病院 脳神経内科

2024年9月27日から10月1日にかけて、米国フィラデルフィアで開催された「International Congress of Parkinson’s Disease and Movement Disorders」に参加いたしました。初めての国際学会での参加と発表に不安もありましたが、渡辺教授のサポートのおかげで充実した日々を過ごすことができました。

愛知県から2回の乗り継ぎを経て、約1日かけてフィラデルフィアに到着いたしました。興奮のあまり飛行機では眠れず、15時頃の到着でしたが、到着後も当直明けのような気分でそのまま街を散策いたしました。フィラデルフィアは犯罪や事件が多い地域で、特にケンジントンという危険な地区では年間死亡者数が多く、麻薬中毒者が溢れております。リアルな状況を体感してみたいと思いましたが、現地の人にもその地区には行かないように言われたため、安全そうなセンターシティを中心に散策いたしました。中心部にある巨大で華麗な市庁舎はアメリカでもっとも高い石造建築物で、造形美に溢れ、昼間も夜間もどの方向から見ても感動しました。街にも壁面アートや銅像といったパブリックアートがあり、歩いて楽しむことができます。

学会初日は、日本との会場の雰囲気の違いに圧倒されました。発表者が壇上に上がる際には音楽や照明の演出があり、質疑応答の時間も長く設けられており、打ち切られることはありませんでした。全体的にフランクな印象があり、誰でも気軽にディスカッションできる非常に良い雰囲気で、参加前に感じていた緊張も気づけばなくなっておりました。

2日目は発表日でした。多系統萎縮症とセロトニン系について、ドパミントランスポーターシンチグラフィを用いたセロトニントランスポーター画像の開発、セロトニントランスポーター画像のspecific biding ratio値と髄液5-hydroxyindoleacetic acidやUnified Multiple System Atrophy Rating Scaleなどの臨床スコアとの相関、病理学的検討について盛りだくさんの内容でした。いくつか質問をいただき、拙い英語でしたが、聞き取っていただいた方々にはとても感謝しております。また、米国の研究支援を行っている方にもお声掛けいただきました。次回以降は、より深い議論ができるよう、英語のレベルをしっかり上げて参加できればと思います。

3日目は昼間に観光を挟みましたが、朝のセッションと夕方からのセッションに参加いたしました。学会が大規模なため、パラレルセッションが多数あり、ポスター発表だけでも2000件近くありました。それだけでも回るのが大変でしたが、パーキンソン病におけるバイオマーカーや腸内環境との関係についての研究、変性疾患における嚥下機能についての研究など、当教室で自身が関わっている内容についても発表がいくつかあり、さらに知識を深めることができました。αシヌクレインの抗体療法をはじめとした病態抑止療法開発の現状を知るとともに、パーキンソン病のバイオマーカーを用いた診断基準についても、決して確立された内容ではなく、今後も更なる議論が必要であることを実感できました。また、夕方の動画を交えたセッションでは、突然隣席の見知らぬ方から話しかけられて、いろいろ議論することもありました(こういった点も日本ではまずないだろうと思います)。中でも、多系統萎縮症におけるL-dopaの効果判定に関しては、1000mgまで増量して継続することについて、人種や体格差による困難さが議論されていました。私自身も、多くの日本人にとってL-dopa 1000mgの維持は難しいこと感じますし、アジア諸国の先生方も副作用などの観点から継続の難しさを訴えていました。

4日目の朝から帰国だったため、Video Challenge Sessionに参加できなかったことが心残りでしたが、新規の治療について個人的に気になったのが、FDAに新規承認された「Crexont」です。即放性顆粒と徐放性ペレットを組み合わせたカルビドパ/レボドパの新しい経口製剤で、他の即放性カルビドパ/レボドパ治療薬と比較して、〈より長く良好な血中濃度維持〉を提供し、投与頻度を減らすことができるL-dopa製剤です。新たな治療選択肢になると期待して日本での承認と発売を待ちたいと思います。また、当院でも行っているMSAの国際共同治験に関するミーティングにも参加することができました。内容はお話しすることができませんが、非常に貴重な経験となりました。

もちろん観光もしっかり楽しみました。楽しみにしていたフィラデルフィア美術館に行ってみました。ロッキーの銅像横にある映画のワンシーンの坂を上って入場いたしました。外観や内装も非常に美しく、多数の美術品を通じて各国の美術文化を楽しむことができました。ゴッホのひまわり、セザンヌの大水浴など数々の印象派の名作とともに、日本の茶室やお寺がそのまま再現されているアジア美術セクションなど、様々な分野の展示がありました。同時に日本文化の美しさと素晴らしさを再度実感いたしました。食事も非常に多彩で、有名なチーズステーキサンドも食べましたし、東海岸のカキ、ロブスター、クラムチャウダーも渡辺教授をはじめ多くの先生方と楽しみました。また、同世代で留学中の先生とも食事に出かけ、美味しい料理とお酒を堪能しながら様々なお話を伺うことができました。

初めての国際学会参加でしたが、多くを学び、交流することができ、非常に多くの刺激を受けてモチベーションが高まりました。今後も様々な学会で研究報告を行いたいと思います。

Fig.1

Fig.2

Fig.3

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