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神経治療最前線 海外学会参加報告

ADPD2019

The 14th International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Diseases ADPD2019

The 14th International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Diseases
Lisbon,Portugal
2019年3月26日〜31日

眞野 智生 大阪大学大学院医学系研究科脳神経機能再生学

The 14th International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Diseases(ADPD2019)が,2019年3月26〜3月31日の期間,ポルトガル・リスボンで開催された.総勢3800人を越える参加者が参加した.(写真1)
International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Diseases(ADPD)は,2年に一度開催されている学会で,The 13th International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Diseases(ADPD2017)は2017年に前田哲也先生(岩手医科大学)がご報告されている.筆者も,2年前のADPD2017にも参加をしたが,アルツハイマー型認知症やパーキンソン病の蛋白凝集などターゲットとした疾患修飾薬の開発の話題が盛んに行われていた.また,パーキンソン病に対する新しい受容体拮抗薬やワクチン療法など,演者及び製薬会社が今後の展望などの講演や,動物実験及びヒトに対する介入研究を聴講した.今回のADPD2019の演題はADPD2017と比較して,シンポジウム及び口演において,臨床研究の話題は僅かで,基礎研究の発表が大幅に増えていた.大会長や運営委員は異なるものの,同じ学会内での変化の大きさに驚かされたが,この変化は,アルツハイマー型認知症やパーキンソン病治療の開発状況を反映していると言わざるを得ない.この2年間では,期待された疾患修飾薬の臨床治験及び試験が相次いで中止や期待された結果を得ることができなかった.ADPD2019では,もう一度基礎研究に立ち返ってのメカニズム解析が重要視されているように感じた.原因蛋白の生成・凝集過程や,病態獲得のメカニズムの解明研究などが主体であったが,エクソソームを使用した疾患鑑別への応用などの発表があった.一方で,臨床研究は,生化学的なバイオマーカー開発の話題が多く,脳機能画像やイメージングの話題は影を潜めていた.バイオマーカーに関しても,ADPD2017では評価指標としての疾患修飾薬の薬効を鋭敏に反映するバイオマーカーの探索研究を散見したが,本学会ではprodromal phaseでの診断的バイオマーカーや,鑑別診断及び既存の指標との関連性を解析するような横断的解析の発表が多かった.
我々は,“Drug Development,Clinical Trial:Transcranial magnetic stimulation”というポスター発表枠に,“Efficacy and safety of repetitive transcranial magnetic stimulation in Alzheimer's disease;open-label trial”として臨床研究を演題登録したが,当日の発表は我々の1演題のみであった.前頭前野への脳刺激による一過性の注意機能の持続や遂行機能の変化を報告し,ポスターセッションでは多くの方が興味を示してくれた.おそらく,前後の演題とのテーマの差異が大きいため,逆に関心を集めたのでないかと思われる(写真2).
ADPD2017と19に参加し,発見と反省を繰り返しながら,医学は進歩していることを再認識できた.一方で,臨床試験でnegative dateであった場合に,企業治験などは詳細を控える傾向もある.同じ轍を踏まないためにも,negative studyでもpositive studyと同様の発表の機会や評価を与え,皆で検証すべきであると考える.

写真1 学会会場であるLisbon Congress Center.テージョ川沿いにありました.
写真2 ポスター前で解説する筆者.写真では伝わりにくいのですが,多くの聴衆に囲まれ,緊張しました.

写真1

図1

写真2

図1

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