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神経治療最前線 海外学会参加報告

DIA Real World Evidence Conference

DIA Real World Evidence Conference参加報告

中村治雅
国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナルメディカルセンター
臨床研究支援部 部長

DIA Real World Evidence Conference
InterContinental San Francisco | San Francisco, CA
November 5-6, 2018

DIA Real World Evidence Conference参加報告

2018年11月5、6日とサンフランシスコで開かれましたDIA Real World Evidence Conferenceに参加してきました。

皆様、“DIA”という組織をご存知でしょうか。DIAとは、Drug Information Associationのことでその成り立ちは、1964 年、サリドマイド事件を憂慮した約30 名のメンバーによって米国で設立されました。その後世界的な活動に広がり、医薬品、医療機器、再生医療製品などの研究開発、ライフサイクルマネジメントにおけるイノベーションをサポートする教育活動や規制当局・企業・アカデミア・患者さんと、さまざまなステイクホルダーでの情報交換や議論の場を提供している世界的な非営利団体です。世界中で創薬、開発、薬事、安全性、CMC、PM、DM、統計など様々な専門分野の専門家、一万数千名が参加しています。
毎年、日本、米国、欧州でそれぞれ大きな年次総会が開かれています。
http://www.diajapan.org

今回はそのDIAが提供している小規模なカンファレンスに参加しました。DIAは世界中で、その時点でのトピックについてのカンファレンスやワークショップなどを開催しているのですが、今回は、今最も話題の“Real World Evidence(RWE)”の、研究開発、承認審査、安全性監視活動等への活用に向けた米国の動向や、米国FDAの考え方などをうかがい知ることができました。参加者は100名程度と小さな会議ですが、特にFDAからの演者は踏み込んだ内容で話をされていました。
以下が、今回参加したカンファレンスのプログラム全容です。

Session 1: Landscape Analysis of Real World Evidence and Current Regulatory
                Frameworks
Session 2: Non-Interventional Studies: Study Design Considerations and Current
                Applications
Session 3: Use of RWE to Supplement Clinical Trial Design
Session 4: The Drive Towards Pragmatism in Randomized Clinical Trials: Are We
                There Yet?
Session 5: Use of RWE in Label Expansion
Session 6: Patient Contributed Data
Session 7: The Power of Harnessing RWD from Wearables
Session 8: When RWD Are Good Enough to be Reliable: Recognizing Fit-for-
                Purpose Evidence

このうち、興味深いセッションがいくつかあったので紹介します。

Session 1:Landscape Analysis of Real World Evidence and Current Regulatory Frameworks FDAのCenter for Drug Evaluation and Research(以下、CDER)のOffice of Medical Policyの方から、RWE活用に関する最新の検討状況が説明されていました。現在のRWEの活用に関するFDAの活動は、一昨年に成立した21st Century Cures Actに基づいて進められているものです。今後の進め方が、本年の初めにFDAのウェブサイトに公開されており、是非一度目を通していただければと思います。今後FDAがどのように進めていくのかの全容が記載されています。
FRAMEWORK FOR FDA’S REAL-WORLD EVIDENCE PROGRAM

Session 5: Use of RWE in Label Expansion
CDERの審査官による講演では、これまでのCDERにおけるRWE活用の概要や、今後の活用法策として、承認審査の段階でRWEを適応拡大等に活用することが考えられており、その際に考慮すべき事項が説明されていました。これまでの活用としては、センチネルによる市販後の安全性評価や希少疾患やがんの領域において、レジストリや他のデータベースからの自然歴をシングルアーム対する比較対照として活用しているといったことが紹介されました。FDAにおいても、必ずしもRCT至上主義というわけではないのだと思われますし、これまでも実施可能性なども考慮していることがわかりました。またRWEを活用するにあたっての検討すべきKey parameterとして、research question、patient and group selection、endpoint、database quality and traceabilityなどが解説されました。なお、これは何も薬事制度下での活用に限らない、研究に一般的な問題でもあると思われます。

これまでのいわゆる治験、ランダム化比較試験のみでなく、リアルワールドエビデンスが薬事制度下でも活用されていく流れは世界的潮流と考えられます。なお、日本でも同様にMID―NETやクリニカルイノベーションネットワークなどでも検討が始まっていることです。 現在、GCP Renovationの元にICH-E6(GCP)の改定も進められており、神経領域は関連の深い領域でもありますので、ぜひ今後もこの分野には注目していただきたいと思います。
また、研究開発などにご興味のある方は、DIAにも一度参加されてみてはいかがでしょうか。

図1

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