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15th AOCN

15th Asian and Oceanian Congress of Neurology (AOCN)

第15回アジア・オセアニア神経学会議
三重大学大学院医学系研究科神経病態内科学 伊井 裕一郎

15th Asian and Oceanian Congress of Neurology (AOCN)
Kuala Lumpur / Malaysia
2016年8月18日〜21日

1.はじめに

 2016年8月18日から21日の4日間、マレーシアのクアラルンプールで第15回アジア・オセアニア神経学会議(Asiam and Oceanian Congress of Neurology: AOCN)が開催されました。会場は、高さ452mで1998年の完成から2003年までの5年間は世界で最も高いビルであったペトロナス・ツイン・タワーに隣接するKuala Lumpur Convension Center (KLCC)で、アジア・オセアニア地区を中心に35の国と地域から約570名が参加しました。
 ガイドブックによると8月のクアラルンプールの平均最高気温は同月の東京の平均最高気温とほぼ同じくらいとのことでしたが、この時期は乾季のためか日本の蒸し暑さに比べると湿度はさほど感じませんでした。

2.学会

 8月18日にはrTMS、Epilepsy-EEG、Neurosonology(Stroke)、Nerve and Muscle Ultrasound、Epilepsy-Presurgical Evaluationの5つのWorkshopとMovement DisordersのTeaching Courseが開かれました。19日から21日には、下記の10領域のシンポジウム、口演およびポスター発表が行われました。

  1. Epilepsy
  2. Stroke
  3. Neuromuscular/Neurophysiology
  4. Movement Disorder
  5. Multiple Sclerosis
  6. Dementia
  7. CNS Infections
  8. Headache and Pain OR Neuropaediatrics/ AOCCN
  9. Neurosciences (Current status in Stem Cell Therapy)
  10. Neurorehabilitation

 シンポジウムでは、本邦からも多数の先生方が発表されました。Global Neurology Symposiumでは、徳島大学の梶教授がAsian Initiativeとして日本と東アジア地域での高齢化と脳卒中や認知症の問題、地域内での神経内科学の連携と教育について発表されました。また、梶教授はTranslational Neuroscience SymposiumでDystoniaについても講演されました。岡山大学の阿部教授はNeurosciences (Current status in Stem Cell Therapy)のシンポジウムで虚血性脳卒中に対する幹細胞治療について、Dementia 1 (The non-Alzheimer’s Dementia)のシンポジウムでfrontotemporal dementia (FTD)の多施設共同研究であるOKAYAMA FTD Studyについて、およびDementia 2 (Assessment and treatment of AD and other dementia)では大脳白質病変や海馬傍回萎縮の軽度認知障害(MCI)からADへの進行リスク等について発表されました。多発性硬化症(MS)のシンポジウムでは、福島県立医科大学多発性硬化症治療学講座の藤原教授がMSの発症機序についてと2015年のneuromyelitis optica spectrum disorder (NMOSD)診断基準とその有用性および抗myelin-oligodendrocyto glycoprotein (MOG)抗体陽性疾患について講演され、千葉大学の桑原教授がNMOと抗MOG抗体陽性のNMO like syndromeの病態について発表されました。桑原教授は、Autoimmune Neurological Disordersでアジアにおけるギラン・バレー症候群(GBS)について概説されるとともにGBSに対するEculizumabの治験についても講演されました。Neuromuscular/Neurophysiology 1 (Inflammatory Muopathy)では国立精神・神経医療研究センターの西野先生が壊死性ミオパチーについて講演されました。また、教育セッションでは国立精神・神経医療研究センター理事長の水澤先生が、東京医科歯科大学で開発された小脳運動学習の定量的評価システムについて講演されました。
 シンポジウムが2会場、一般口演が1会場での同時並行で行われ、私自身はシンポジウムのみの聴講となってしまいましたが、その中のいくつかの演題を紹介します。

Stroke(Asian Pacific Stroke Organization:APSO)2

1)From antiplatelets to anticoagulation: antithrombotics in ischemic strokes
  Chang HM(Singapore)

 虚血性脳卒中に対する急性期および慢性期(二次予防)における抗血小板薬と抗凝固薬について、既報告のreviewを中心に概説されました。非心原性虚血性脳卒中の急性期治療として、ハイリスクのTIA患者や主幹動脈の50%以上狭窄があり微小塞栓が検出される症例に対しての3週間以内のアスピリンとクロピドグレル併用療法が挙げられました。二次予防としてのアスピリンとクロピドグレルの併用療法については、出血のリスクを伴うことを考慮するとともにrisks & benefitsを十分考慮する必要があること、ハイリスク群ではアスピリン単剤療法よりもクロピドグレルやアスピリン/ジピリダモールを薦められていました。また、シロスタゾールの有効性および更なる検証の必要性についても述べられていました。再発リスクの高い虚血性脳卒中患者に対する抗血小板剤3剤併用療法の有効性および安全性を検証するTriple Antiplatelets for Reducing Dependensy after Ischemic Stroke (TARDIS)試験が3,000名を超える患者エントリーをもって2016年4月に登録終了となり解析結果が待たれています。抗凝固薬については、NOACのembolic strokes of unknown source (ESUS)に対する有用性の検証が必要であると述べられました。

2)Vascular Cognitive Impairment Current (Concepts and) Management
  Chen C(Singapore)

 高齢者では脳血管病理が高頻度に認められ認知障害や認知症に関連するとの点からVascular Cognitive Impairment(VCI)の概念がまとめられた経緯について概説されました。高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などの血管リスクはADのリスクでもあることから、血管因子の神経変性疾患に対する役割が示唆されること、多くの認知症患者では混合病理(主にアルツハイマー病理と脳小血管病)を呈していること、血管病理はAD病理に相加的に作用して認知機能を低下させて認知症へと導く可能性があることについてまとめられていました。また、フィンランドで行われ2015年に結果が報告されたFinnish Geriatric Intervention Study to Prevent Cognitive Impairment and Disability (FINGER)研究で、血管リスクの管理が認知症予防に繋がることが示されたことも挙げられていました。

Multiple Sclerosis (PACTRIMS) 2 Multiple Sclerosis Related Disorder
 Current approaches for the treatment of NMOSD
 Kim SH (Republic of Korea)

 NMOSDの再発予防薬としてAzathioprine (AZT)、 Mycophenolate mofetil (MMF)、 Rituximab (RTX)、 Mitoxantrone、 Tocilizumabのreviewをするとともに、Mealyら(JAMA Neurol 2014)とJeongら(Mult Scler 2015)の報告を提示してRTX>MMF>AZTの順に有効性が高いことを示されました。NMOSDに対するRTX反復投与法のプロトコールは確立されたものはありませんが、演者が2011年にArch Neurolで報告されたプロトコールとして、導入治療:①週1回375mg/m2を4週連続投与、あるいは②2週間間隔で1,000mgを2回投与、維持療法:最初の2年間は4か月間隔で375mg/m2、次の3年間は7か月間隔で375mg/m2を投与する方法を提示されました。しかし、末梢血memory B cell数の減少とRTXへの治療反応性とが関連することから、RTXの投与間隔には患者間で差ができてしまい、その原因としてNMOSD患者のfragment c gamma receptor 3A (FCGR3A)遺伝子多型によるRTXへの治療反応性の違いが挙げられました。RTXはNK細胞の活性を誘導する抗体依存性細胞障害活性(ADCC)によりB細胞を溶解しますが、NK細胞FCGR3A の158valine (V)とphenylalanine (F)の組み合わせとして158F/F型ではRTXとの親和性が最も低く、158V/F型もV/V型に比べて親和性が低くなることが示されました。
 また、最近のNMOSDに対する臨床治験として、MEDI-551-anti CD19 (N-Momentum)、抗IL-6受容体モノクロナール抗体であるSA237 のSakura study、および抗C5モノクロナール抗体であるEculizumabのPREVENT Studyについても提示され、RTX以上の効果が期待される可能性とともに安全性や投与量・投与法も課題として挙げられました。

ぺトロナス・ツイン・タワー41階のスカイブリッジ(高さ170m)から見た学会会場
Kuala Lumpur Convension Center(右上)

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