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The 8th INC

The 8th Inflammatory Neuropathy Consortium

第8回炎症性ニューロパチーコンソーシアム
千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 関口 縁

The 8th Inflammatory Neuropathy Consortium
Glasgow University, UK
2016年6月21日〜24日

【研究分野報告】

 私達は6月21日から24日まで開催された第8回Inflammatory Neuropathy Consortium(INC)2016に参加して参りました。この学会は2年に一度開催される炎症性ニューロパチーのみを対象とした小さな学術集会で、母体であるPeripheral nerve societyの2年に1度の学術集会がない年に、分科会のような形で開かれます。本年はGuillain-Barré症候群(Guillain-Barré syndrome : GBS)が報告されて100周年ということで、GBSの冊子発行や最終日にGBS関連の発表のみで構成された「GBS Centenary Day」の企画などがありました。伝統あるGlasgow大学で開催されたこともあるのか、本学会にしては多い400人を超える参加者で、参加登録が早めに締め切られるという盛況ぶりでした。

その中から、興味深かった演題をいくつかご紹介します。

1.ジカ熱とGBS

 日本でも話題になったジカ熱により発症率が増えたとされるGBSについての報告が南米から複数ありました。ブラジルのSejvarらから、通常よりも発症率が3倍程度上昇し、軸索型GBSやFisher症候群の割合が増加したという報告がありました。しかし発症率の評価法など、疫学調査手法の難しさを感じました。

2.CIDPにおけるIVIg反応性とNK細胞

 ドイツのHeiningerらからは、CIDPにおけるIVIg投与前後でのNatural Killer細胞(NK細胞)の変化について報告がありました。IVIg有効例では、CD56弱陽性のNK細胞を中心にNK細胞の遺伝子発現が減少するのに対し、不応例では変化が乏しいと報告されていました。

3.GBSの新規治療:IgG-degrading enzyme of Streptococcus pyogenes

 中国のWangらから、GBSの新規治療として、IgG-degrading enzyme of Streptococcus pyogenes (IdeS) という免疫グロブリン分解酵素をAMANのモデルウサギに投与した発表がありました。AMANウサギの電位依存性NaチャネルのdisruptionやC3の沈着が、IdeS投与群で減少しており、今後のヒトへの臨床応用が期待されました。

4.International GBS outcome study

 オランダのグループが中心となって2012年から開始されたInternational GBS outcome study(IGOS)について、当初目標としていた1000例の登録を終え、一部解析結果が発表されました。このような企画を実際に立ち上げ、運営させる企画力やマンパワーはただただ感嘆するばかりです。結果は、純粋運動型およびFisher症候群はアジアに多く、治療の内訳はIVIG:PEが9:1であり、死亡率は5%だったそうです。大規模な国際的調査であり、今後解析結果の発表を期待したいと思います。

5.GBS Centenary day:

 最終日はGBS100周年企画の一つとして、GBS関連の発表に丸1日が費やされました。モデルマウスの話から、影響のあったGBSの論文Top10の発表、現在行なわれている治験の話など、まさにGBSずくめでした。その中の治療に関するセッションでは、本学会の皆様にも多大なるご協力を頂いた、重症GBSに対するエクリズマブ療法の治験(Japanese Eculizumab trial for GBS:JET-GBS)の進捗状況について、当科の桑原聡教授が発表しました。GBSにおいては、抗ガングリオシド抗体を始めとした日本の研究者による素晴らしい貢献が現在まで多くなされており、今後も日本から新たな成果を発表できるよう微力ながら貢献して行きたいと改めて感じました。

 学会期間中にUKのEU離脱の是非を問う国民投票があり、治安等に関して不安に思うこともありましたが、目立った混乱はありませんでした。街の人も非常に優しく、食事も予想よりおいしく、学会を楽しむことができました。INCは非常に限られた分野を扱う学会ですが、基礎から臨床まで幅広い発表やレクチャーがあり、とても勉強になります。ご興味のある方はPNSのホームページを是非ご参照下さい(http://www.pnsociety.com/)。

写真1:Glasgow大学構内。

写真2:学会参加者に配られたGBS100周年の記念冊子と、GBS100周年ラベルのミニボトルウイスキー。GBSの歴史から最新の研究まで様々な方が執筆されています。

写真3:日本で行なわれたGBSに対するエクリズマブ治験(JET−GBE)について当科桑原が発表しました。

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