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11th AD/PD2013

The 11th International Conference on Alzheimer’s & Parkinson’s diseases (AD/PD2013)報告

関東中央病院神経内科 織茂智之

11th International Conference on Alzheimer’s & Parkinson’s diseases(AD/PD2013)
Florence / Italy
2013年3月6日〜10日

ルネッサンス時代に花開いた芸術の街フィレンツェ。ウッフィツィ美術館、ドゥオーモ、ジョットの鐘楼、アルノ川にかかるヴェッキオ橋など街そのものが美術館。AD/PD2013はそんな街フィレンツェで3月6日から5日間にわたり開催された。開催地がフィレンツェであったせいか、例年より日本からの参加者も多かった。学会場は古い砦の跡に作られた広い会場で、フィレンツェ駅に近く、また旧市街からも徒歩10-20分程度で行ける便利な場所にあった。

学会で疲れた頭を癒してくれるのが食事とお酒である。花の都フィレンツェの食事はさすがである。どの店に入ってもパスタとピザは美味しく、太陽の恵みをうけたトスカーナ地方の牛肉や濃厚な赤ワイン、トマトベースのズッパ(スープ)、新鮮な野菜などを堪能することが出来た。

学会の通称(AD/PD)どおり、アルツハイマー病(AD)関連の演題が6割、パーキンソン病(PD)・認知機能障害を伴うパーキンソン病(PDD)関連の演題が3割、Lewy小体型認知症(DLB)やその他の神経変性疾患に関連の演題が1割くらいであった。ポスター発表、シンポジウム、Plenary lecture共に薬剤治療に関する発表は比較的少なく、画像診断(PET,MRI,SPECTなど)を用いて各疾患の病態を理解し、早期診断につなげる内容の発表が多かった。ADではtauに関する演題が多くβ-アミロイドに関する演題と同程度であったが、より注目を浴びていたのはtauに関する演題であった。PD,PDDではα-synucleinの話題が多く、基礎から臨床まで多岐にわたっていた。一方それぞれの疾患に対する低分子の新薬がほとんど開発されていないこともあり、新たな治療法は、ワクチン、抗体、Stem cellによるものが中心であった。

今回は紙面の都合上、PD,DLBの話題、特に新たな薬物治療法を中心に報告する。

I. パーキンソン病関連

1. パーキンソン病の薬物治療

1) ドパミン関連

a) Levodopa
IPX066: Carbidopa-Levodopa extended release: IPX066については既に2012年に本誌神経治療最前線で武田先生がレポートされている。今回はStocchi先生によりIPX066とcarbidopa-levodopa(CL)合剤の比較検討で、IPX066がOff時間の短縮、On時間の増加、投与回数の減少(IPX066: 3.5回、CL: 5.4回)、 さらにIPX066とCL/entacapone合剤 (CDE)との比較(ASCEND-PD trial)では、Off時間の割合の減少(IPX066: 23.98%、CLE: 32.48%)、troublesome dyskinesiaのないOn時間の増加(IPX066: 11.36時間、CLE: 9.98時間)、UPDRS II+IIIのスコアの改善(IPX066: 32→29.3、CLE: 32→ 31.7)、投与回数の減少(IPX066: 3.5±0.6、CLE: 5.0±1.2)が示された。IPX066とCLとの血中levodopa濃度のfluctuation index(血中濃度の変動を示す指標で、値が少ない方がより変動が少ない)をみると、IPX066が1.5±0.4とCLの3.2±1.3と比較し有意にlevodopaの血中濃度が安定しており、Continuous Drug Deliveryが達成されているように思えた。

その他levodopaに関しては、sustained-release levodopa prodrugのXP21279、パッチ製剤のND0611などが開発中である。

b) COMT inhibitor
Opicapone: reversible COMT inhibitorで、phase 2aでは40人のwearing-offを有する PD患者に5mg,15mg,30mgを投与し、levodopa濃度の上昇、3-OMDの減少、血中COMT活性の低下を認め、また投与量は30mgが最適とされた。

c) MAO-B inhibitor
Safinamide: MAO-B阻害作用に加え、グルタミン酸放出阻害作用などを有する。Safinamide 100mgはコントロールに比しDyskinesia Rating Scoreを改善し、特にDRS>4では100mgで有意に改善した(Study 018)。


2) 非ドパミン関連

a) Adenosine antagonist
Vipadenant: Adenosine A2a antagonistであるvipadenantの研究では、On時間の有意な増加(43日後: Controlに比較しvipadenant(100mg)1.2時間、57日後: Controlに比較しvipadenant (100mg)1.3時間)、Off時間の減少(43日後: Controlに比較しvipadenant (100mg) 0.9時間、57日後: Controlに比較しvipadenant (100mg)0.8時間)が認められた。

Preladenant: Adenosine A2a antagonistで、phase 2試験ではfluctuationのある患者のOff時間を改善。現在phase 3でfluctuationのある患者、de novoの患者について研究中である。

b)Glutamate antagonist
NMDA receptor antagonist
過剰なglutamateがdyskinesia発症に関与していること、NMDA receptor antagonist作用を有するamantadineがdyskinesiaを38-50%減少させることよりNMDA receptor antagonistがdyskinesiaの治療に有効であると考えられ、remacemide,nemantadine,riluzoleなどついて研究されている。

AFQ056: 分子量313のmGluR5(metabotropic glutamate receptor 5) antagonistでBBBを通過しやすい。10mgからdose dependentにAIMS(abnormal involuntary movement scale)を減少し、100mgの投与で有意にAIMSが減少した。

AMPA receptor antagonist
Talampanel: 臨床的に用いられる初めての薬剤で、pilot studyでは、30例の患者において、levodopa-induced dyskinesiaを改善しうることが明らかになり、現在phase 2の研究が行われている。

c) その他
Nicotineは線条体でdopaminergic terminalとcholinergic interneuronの間にオーバーラップして存在すること、nicotinic AChR (α6 nChR)はnigrostriatal pathwayに選択駅に存在すること、nicotineはMPTPモンキーのdyskinesiaを改善することが報告されている。現在α-7 nicotinic agonistのCAQW051などが研究されている。

α-synucleinの抗体療法: h A30Pの遺伝子変異を有するα-synucleinを導入されたtransgenic mouseに、α-synucleinのprotofibril/oligomerに対する選択的な抗体(mAb47)を週1回14週間腹腔投与したところ、中枢神経系内のα-synucleinのprotofibril/oligomerが65%減少した。一方リン酸化α-synucleinの量、炎症のマーカー、体重、生存率はControlと差がなかった。


2. パーキンソン病と認知機能

1) 認知機能の評価方法

PD患者では3年以内に20%、5年以内に57%がPD-MCIに、またPD-MCIから高率にPDDに進行することが報告されている。従って今後PD-MCIの診断と病態の把握、早期治療介入に関する研究が重要である。

本邦のOhta,Maedaらは、Montoreal Cognitive Assessment (MoCA)を用いてPD患者の認知機能評価を行ない、特に軽度の認知機能障害患者についてはMMSEに比較しより感度が高く認知機能障害を検出できるとした。


2) 軽度認知機能障害とα-synuclein

Zhangらは、24名のPD患者と15名のControlを対象にMoCAを実施し、脳脊髄液中のα-synuclein oligomer及びTNF-α量を測定した。PD患者をMoCAスコア26点以上(PD-NCI: PD-non cognitive impairment)群と25点以下(PD-MCI)に分け、α-synuclein oligomerレベルを比較した。結果、α-synuclein oligomerレベルはPD-MCI群 < PD-NCI群 < Control であり、またMoCAスコアと相関していた。

II. Lewy小体型認知症関連

1. 診断

DLBのシンポジウムでMcKeithは、2013年5月に発表される予定のDSM-VにDLBの診断基準が記載され、内容は2005年の論文(Neurology 2005)に準拠しているとした。さらに診断基準の論文を改定する予定はないこと、(これまではconsortiumを開催して2度の改訂を行っているが、consortiumを開催する予定もない)、DLBとPDDを区別する基準は目的に応じて設定すればよいと付け加えた。


2. 治療

DLB患者の症状で日中の過眠はADLを低下させうる大きな問題である。Armodafinilはラセミ体のmodafinil(本邦ではナルコレプシー、睡眠時無呼吸症候群に適応)からR体のみを単独分離したもので、米国FDAではナルコレプシー、睡眠時無呼吸症候群および交代勤務睡眠障害に伴う過度の眠気治療への使用を認めている。過眠症状を有するDLB患者に対するarmodafinil 250mg/日の有効性及び安全性を評価したopen label試験の結果がBoeveらにより報告された。20名のhypersomniaを伴うDLB患者に対してarmodafinil 250mg/日を3ヶ月間投与し、その有効性及び安全性を評価した。その結果主要評価項目のMWT(Maintenance of Wakefulness Test: 眠気を誘う状況下において、我慢して起きていられる能力を判定する検査) 及び副次項目のESS(Epworth Sleepiness Scale: 主観的な日中の過度の眠気を測定する試験)ともに投与3ヵ月後にベースラインと比較して有意なスコア低下が認められた。またNPIスコアも投与後に有意な改善がみられた。open label試験の結果ではあるが、DLB患者のhypersomniaに対してarmodafinil 250mg/日が有効であること、また安全性面でも大きな問題ないことが示唆された。

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