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65th American Academy of Neurology (AAN) Annual Meeting

65thAmerican Academy of Neurology (AAN) Annual Meeting

第65回 AAN Annual Meeting報告

総合花巻病院 神経内科 槍沢公明

65th American Academy of Neurology (AAN) Annual Meeting
San Diego / USA
2013年3月16日〜23日

第65回AAN Annual Meetingはカリフォルニア州サンディエゴ市で2013年3月16—23日の会期で開催されました。サンディエゴはアメリカ西海岸のほぼ最南端に位置し、メキシコ国境が目と鼻の先です。南北2つの深い入り江と、なだらかな丘陵からなる風光明媚な都市であり、また、海軍の重要な軍事拠点でもあります。市中心部は南の入り江に作られた広いヨットハーバーに面しており、タワーブリッジハイウェイで連絡する対岸はリゾート地区になっています。一方、これらの地区をすこしはずれると、広大な軍事施設、兵員のキャンプ地や船のドックがあり、軍艦が襟を正して並んでいます。会場となったSan Diego Convention centerは気持ちのよいヨットハーバー沿い(近接する巨大ホテルの地階から張り出したレストランやカフェ、様々なショップが並ぶ)にある大きな会場です(写真1)。海側には広いテラスがレイアウトされており、そこで歓談する各国Neurologistのすぐ上空を軍事用ヘリコプターが頻回に行き来するのが印象的でした。

写真1)San Diego Convention centerを陸の南側から写す。向こう端まではよく見えない。

私は一般病院の臨床医ですので、もっぱら臨床の学会に参加しています。中でもAAN Annual Meetingは熱心な参加者の多い学会であり、観光地に参加者が奪われ学会場が閑散としてしまうことはまずありません(写真2:会長講演の様子)。質疑応答も活発で、口演発表のみならず、ポスター発表でも1.5時間のstand byの間、ずいぶん話しかけられます。ただし、今回、私が専門とする重症筋無力症(MG)に関する発表はそれ程多くなく、40演題程度だったようです。アメリカでMGに対するmethotrexateや rituximabの前向き試験が行われていると知人から聞いていましたが、今回はそれらのデータを含め、治療に関する系統的前向き研究の発表はありませんでした。MGはそれ程、珍しい病気ではないのですが、治療の前向き試験を企画してもなかなかエントリーがすすまない場合が多いのが現状です。「臨床試験をスムースに進める上でも、普段からMG患者情報のregistryシステムを作っておく必要がある」との意見を何度か聞きました(私も全く賛成です)。Rituximab有効例のcase seriesは10年前から引き続き、今回も報告されていました。アメリカらしく、治療コストの調査も散見されました。後ろ向き検討でも質が高く眼についたものとして「5年以上(odds ratio, 4.6)、または150 mg/day以上(odds ratio, 4.8)のazathioprineは皮膚癌のリスクを高める」というデンマークからの報告がありました。人種差があり得ますが、説得力ある報告でした。「単線維筋電図所見の経時変化はMG症状の変化と関連し、治療のbiomarkerとなり得る」というposter発表を有名なDon Sanders教授自身が行っていました。Jitter正常な筋線維の比率が重要なようです。Sanders教授はThe Muscle Study Group (アメリカのMG臨床共同研究の中心)のリーダー的存在です(写真3)。ちなみに、我々(私、NY先生、MM先生)はJapan MG Registry groupのデータから「患者QOLに影響する臨床因子—640例の横断的解析」、「患者QOLの改善から見た適切な治療目標—2年追跡282例のデータ解析」、「純粋眼筋型MGの特徴と治療反応性」の3演題を発表しました。少なくとも話しかけて来てくれた先生は、我々が主張している治療目標などについて理解し好意的でした。

写真2)会長講演。沢山のモニター画面が設置されており、ぎっしり満席の聴講者はざっと2-3000名以上か?

写真3)向かって右がSanders教授、左は著者

余談ですが、仙台医療センターのSY先生(あちこちのポスターで質問なさっていました)が、何故かKv1.4抗体について質問を受け始めました。周囲で聞いていると、どうやら慶應義塾大学のSS先生(Kv1.4抗体発見者)と同姓のため人違いされている様子でしたが、御本人は気付かず、「何で僕に抗体の詳しい話を聞くのかな??」と困惑しながらも笑顔は絶やさず一生懸命、わかる範囲で答えていた由。国際学会初参加の若いWG先生は、質問に対する自分の答えが不十分であったと後から気付くと、既に去った質問の主を追っかけていって説明を強引に追加するという見事な積極性を見せ、周囲の日本人医師(私を含め)を感心させました。AAN Annual Meetingには良い刺激効果があり、臨床研究に対する彼の意欲は倍増した様子でした。若い先生におすすめの学会だと思います。その夜は、これらの話題などを肴に、何人かの先生と楽しく食事をご一緒させて頂きました。

AAN Annual Meetingは日本から参加の先生も多く、存じ上げている先生も少なからずお見かけしました。日本を遠く離れると日頃の重荷や考え事から少し解放されるからか、お顔は概してにこやかです。3月のサンディエゴは日陰ではジャケットを着ていても肌寒い位でしたが、何故か額一杯の汗(さては観光地回り直後?)と笑顔がいい感じの先生もいらっしゃいました。気分転換はQOL、さらには仕事にも影響しますし重要ですね。夏休みも冬休みもない勤務医同志の先生がた、多忙なればこそ国際学会に参加しましょう。

今回、サンディエゴへはB787の直行便を使う予定でしたが、ご存知の電気系統故障でキャンセルとなりました。7年前にサンディエゴを訪れた際(やはりAAN Annual Meeting)、ロスアンゼルス—サンディエゴ間のコミューター便でロストバゲッジの苦い記憶もあり、今回はロスアンゼルスからレンタカーを使うことにしました。ロスアンゼルス—サンディエゴ間は200kmたらず、主要ハイウエイのみ使うと2時間弱の距離です。しかし、私はなるべく寄り道をして海岸線を通り景色を楽しみました。サンディエゴ中心街から約10-20 km北側には岩場 (場所によってはアザラシが集まっている) の混じる美しい海岸が続きます。有名なラ・ホヤ地区(リゾート地区)には洒落たホテルやレストランが沢山あります。レンタカー君はその後も大活躍し、私のQOLを改善してくれました。「MG臨床研究の推進」と「次はリゾート地から学会場に通う」、2つの大志を胸に帰途につきました。

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