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神経治療最前線 海外学会参加報告

22nd International Symposium on ALS/MND 2011

The 22nd International Symposium on ALS/MND 報告

小久保康昌 三重大学神経内科

22nd International Symposium on ALS/MND
Sydney, Australia
2011年11月27日〜12月2日

Scientific sessions の様々な報告の中から印象に残ったALSにおける新規原因遺伝子であるC9ORF72、Neuroinflammation、RNA代謝、環境因子、治療法探索に関する発表について簡単に紹介したい。

1.C9ORF72遺伝子:以前から報告されていた 9番染色体短腕にリンクする常染色体優勢遺伝性ALS-FTD 家系から新たに発見されたC9ORF72遺伝子のGGGGCC Hexanucleotide Repeatの異常伸張に関する複数の報告があった。Renton らによるとC9ORF72遺伝子変異は欧米のFTDで最も高頻度の原因遺伝子で、特にFinlandではFALSの46%、SALS の21.1%を占めさらにfamilial FTD の29.3%であると報告された。TDP-43に続いてALSとFTDが密接な関係にあることを裏付けるとともに、TDP-43, FUS/TLS と同様にRNA processing異常と神経細胞死との関連を示唆する新発見であった。日本人ALSにおける検索が進行中のようなので結果を待ちたい。

2.Neuroinflammation: Appel らによるとinnate immune system の活性化ミクログリアと adaptive immune system の CD4+T cellsは、疾患早期には neuroprotective に後期には neurotoxic に働き疾患進行に顕著な影響を与える。発症早期に regulatory T lymphocytes を増加させることができれば様々なサイトカインや trophic factor の調節によって進行抑制に働くかもしれない。Yamanaka らは、innate immune system の中の TLR (Toll-like receptors) signaling pathwayの 必須 adaptor protein である TRIF がALS 進行において重要な役割を果たすことを報告した。

3.RNA and Protein Processing: TDP-43、FUS/TLS はともにRNA processing に関与してtranscription, splicing, 核と細胞質間のshuttling, protein translation、遺伝子発現調節、樹状突起での蛋白合成の調整などに関わることで神経細胞死を引き起こすのではないかと考えられて来ている。Kwakらは、ADAR2がALSの運動ニューロンで特異的にdown regulate されていることでGluA2 Q/R siteでの editing 不全を生じこの結果 AMPA 受容体における Ca2+ 透過性亢進から細胞死に至るというメカニズムを報告した。

4.BMAA :Guam のALS/PDC の原因仮説として提唱されている藍藻由来の神経毒 BMAA についてのセッションがあった。BMAAは、様々なglutamate receptorsに影響する、cystine/glutamateの共役輸送に関わり酸化ストレスやグルタミン酸放出に関与する、tRNA蛋白異常からconformational change を引き起こす、など運動神経細胞死との関係が報告されていた。フランスのThau Lagoonという地域のALS clusterと高濃度BMAAを関連づける報告があった。近隣の非多発地区でのBMAA濃度はどうなのだろうか?

5.Target Pathways and Therapeutic Strategies: mutant とwild type のTDP-43またはFUS/TLS を発現させたzebrafishとC. elegans を用いたchemical screening で、Methylene Blue がcellular stress を軽減することでALS治療に有効性を示す可能性が報告された。

6.Sobue らは、SBMAにおけるleuprorelinやその他の病態関連因子をターゲットとしたcombination therapy の重要性を報告した。Nukina らは、sarkosyl-insoluble TDP-43 fibrilにseeding activity があることを報告した。

ALS/MND学会は例年寒いという印象が強いですが、今回は年末のシドニーということで気候もさわやかで快適な学会でした。ALS/MND に関する最新の情報に触れられることと、こじんまりした会ということもあって第一線の研究者と交流できるよい機会だと思います。

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