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26thCongress of the European Committee for Treatment and Research in Multiple Sclerosis (ECTRIMS)



26thCongress of the European Committee for Treatment and Research in Multiple Sclerosis (ECTRIMS)報告

国立病院機構宇多野病院多発性硬化症センター
田中正美

26th Congress of the European Committee for Treatment and Research in Multiple Sclerosis
Gothenburg/Sweden
2010年10月13〜16日

26thCongress of the European Committee for Treatment and Research in Multiple Sclerosis (ECTRIMS)がSwedenのGothenburgで2010年10月13-16日に開催された。毎年、100近くの招待講演のほか、900演題ほどの一般演題を集めてヨーロッパの都市で開催される世界最大の多発性硬化症(MS)に特化した学会で、3年ごとに北米のACTRIMSと共催して欧州と北米とで交互に開催している。2006年のマドリードから多くの日本人が参加するようになり、来年はACTRIMSとの共催でアムステルダムで9月19-22日に開催される。北米からの参加者も多く、基礎的な研究発表も少なくない。欧米では主に再発寛解型MSを対象に数多くの治験が進行しており、ECTRIMSでは新しい薬剤の報告のほか、従来の追加報告やsubstudy報告も数多く発表される。すでに市販されているNatalizumabなどの注射薬だけでなく、より継続治療が容易な内服薬の開発も進んでいる(下記表参照)。

注射薬としては、やはりNatalizumabが話題で、再発予防剤としては現在世界最強である。2010年6月までに7万名以上に投与されているが、2年以上継続投与すると1000人に一人の割合で進行性多巣性白質脳症(PML)が発症する。しかし、急に中止すると3ヶ月で血中濃度がゼロになるのでリバウンドを誘発するが、中止後にインターフェロン(IFN)などを投与することで、再発をある程度抑制できる。JCウイルス抗体を測定する新しいELISAが示され、Natalizumab治療後に陽転患者がいないこと、false positiveは2.5%のみであることから、PML発症のリスクを治療前に推測できる可能性が示された。また、内服薬(Firategrast)のPhase II studyの結果では高用量群で造影病変数の抑制が認められ、効果は弱いが治療薬としての可能性が示唆された。

2009年に国内でも治験が終了したFingolimod(FTY720)は冬虫夏草の培養上清から分離された、国内で開発された内服薬である。Sphingosine-1-phosphate(S1P)受容体と結合して、リンパ球を可逆的にリンパ節に閉じこめることで中枢神経へ炎症惹起性リンパ球が入ることを抑制する。本剤ではプラシーボを対照としたFREEDOMS試験とIFNβ1a (Avonex)を対照としたTRANSFORM試験とがあり、いずれでも良好な結果が得られているが、特に脳容積の減少率の抑制がきちんと証明されたことは特筆に値する。ただ、TRANSFORMS試験で2例ヘルペスで死亡していることは注目すべきである。S1P受容体は神経細胞やastrocytes, microglia, Oligodendrogliaに発現していて、FTY自体も血液脳幹門を超えるので、神経細胞保護作用やoligoの生存延長作用が期待される。

Teriflunomideはdihydro-orotate dehydrogenase (DHO-DH) inhibitorで、ピリミジン合成をブロックすることで自己反応性のTおよびB細胞を抑制する。各群360例ほどのプラシーボ、7mg、14mg群の2年間の比較対照試験を行ったPhase III (TEMSO) studyではプラシーボに比し、造影病変数、造影病変のない患者の割合、T1低信号病変容積の変化でいずれの治療群でも有意に効果が認められた。8年間のオープン試験では長期投与での安全性が証明され、感染症のリスクがないことが示された。

抗CD52ヒト化モノクローナル抗体であるAlemtuzumab (Campath-1H)を用い、IFNβ1a (Rebif)を対照とした3年間の試験では対照に比して74%も再発率が低下したことが示されているが、今回、5年後の成績が報告された。5年後の年間再発率でも対照群より低下しているだけでなく、障害度は治療前よりむしろ改善していることが示された。

最近の治験では、プラシーボを対照に半年間で脳MRIにより効果を判定するか、1〜3年間観察する場合はIFNβが基準薬になりつつある。今後、次々に新しい薬剤が登場してくると思われ、有害事象の知識も問われることになるだろう。

表:MSで再発予防や進行抑制のために試みられている薬剤の作用機序別分類
1.代謝拮抗剤
Teriflunomide*
Cladribine*
2.白血球除去剤
Alemtuzumab
Daclizumab
3.T細胞除去剤
Natalizumab
Fingolimod (FTY720)*
4.B細胞除去剤
Rituximab
5.広範囲作用剤
Laquinimod
Fumaric acid (BG12)*
*内服薬

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